僕は余りにも  君を愛しすぎた
「どうするんだ?君はどうしたい?」

「わかりません。私にはサラのような自信はありません。私はもっと勉強したいのです。いろいろな作品を見て自分が納得できるものを作りたいのです。サラのように早くから恵まれた環境の中で思う存分やってきた人とは比べられないほど私は未熟なのです。だから彼女が期待している良い返事は私には言えなくて先生にご相談したかったのです。」

「莉里、君は若い。やって失敗したら戻ってくればいいんだ。僕が言えるのはそれだけだ。」

「先生、私にはそんなトライアルなことはできません。私はサラの話が無ければずっと先生のお手伝いをしていたいのです。先生のそばで先生のお役に立ちたい。今の私には留学が実現しない夢でもいいのです。ただ先生と一緒にいたいのです。私、もっと先生に見つめてもらいたい。私のわがままでしょうか?」

「いや、君がいてくれて助かっているよ。だがチャンスは一度だ。サラは君のアートが欲しいんだ。僕も君が欲しい。同時に両方は無理だ。」

「私は先生が好きなのです。私のアートは先生への想いの上にあるのです。私、先生と離れたくない。私にとってアートが全てじゃない。」

「莉里、君の気持ちは嬉しいし、僕もその想いに応えたい。だが今はダメだ。同じアーティストとしてサラの気持ちは無視できない。」

「でも先生、私は自分の想いを切り捨ててまでサラとやっていくなんて無理です。」

「わかった。君の想いはわかった。」

自分でも不思議なくらい胸の内を伝えられたことに驚くと共に

私は先生への想いが伝わってドキドキしつつホッとしていた。

それはきっと先生が経験値の豊富な大人であることが幸いしたとも思った。

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