未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
「ミス? な、何をおっしゃってるのか、わたくしにはさっぱり……」
さすがに菊子さんも自分の嘘がばれた事に気付きはじめたのか、目は泳ぎ、おどおどし、いくぶん顔が青ざめてきたようだ。
「未来の僕らの息子ですが、“信吉”という名前だそうですね?」
「そ、そうよ。そう聞いてるわ」
「僕も後で思ったんですがね、それは変なんですよ」
「な、何が変なのよ?」
「僕はですね、これは誰にも言った事はないんですが、自分の名前があまり好きじゃないんです。特にノブなんとか、という名前がね。だから、自分の息子にそんな名前を付ける訳がない。付けるなら、そうですね……昌幸か幸昌、あるいは大胆に幸村とかね。そういう名前にするはずです」
「…………」
「ま、それは小さなミスです。大きなミスは……ヒロミです」
「知らないわよ、そんなネコ」
「おや、ヒロミがネコだって、よく知ってましたね?」
「き、聞いたのよ」
「未来の自分からですか?」
「そうよ?」
「それは変ですね……。未来から来たあなたは、ヒロミを知らなかったんですよ?」
「そ、それは……」
話せば話すほどボロが出る。俺は可笑しくて笑い出したいのを、必死で堪えていた。
さすがに菊子さんも自分の嘘がばれた事に気付きはじめたのか、目は泳ぎ、おどおどし、いくぶん顔が青ざめてきたようだ。
「未来の僕らの息子ですが、“信吉”という名前だそうですね?」
「そ、そうよ。そう聞いてるわ」
「僕も後で思ったんですがね、それは変なんですよ」
「な、何が変なのよ?」
「僕はですね、これは誰にも言った事はないんですが、自分の名前があまり好きじゃないんです。特にノブなんとか、という名前がね。だから、自分の息子にそんな名前を付ける訳がない。付けるなら、そうですね……昌幸か幸昌、あるいは大胆に幸村とかね。そういう名前にするはずです」
「…………」
「ま、それは小さなミスです。大きなミスは……ヒロミです」
「知らないわよ、そんなネコ」
「おや、ヒロミがネコだって、よく知ってましたね?」
「き、聞いたのよ」
「未来の自分からですか?」
「そうよ?」
「それは変ですね……。未来から来たあなたは、ヒロミを知らなかったんですよ?」
「そ、それは……」
話せば話すほどボロが出る。俺は可笑しくて笑い出したいのを、必死で堪えていた。