未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
次の日、小松は朝からやれ作法だのお稽古事だので忙しく、俺は一人で手持ちぶたさにしていたら、母から「会社に行って仕事でもしてなさい」と言われ、来てもするべき仕事など何も無いのだが、こうして会社に来ている。

ちなみにその時、


「真田家の当主は代々社長を務めて来たんだから、あなたも考えなさいよ?」


と母から言われ、ちょっとだけだが俺もそのあたりは考えるべきかなあ、なんて思ったりもしている。


しかし、目下の俺の問題はそれじゃないんだよな。


トントンと力強いノックの音がしたかと思えば、すぐに勢いよくドアが開けられ、兼続が俺のいる役員室へやって来た。


「おお。悪いな、忙しいのに……」

「いいさ。で、どうなった?」


兼続は向かいのソファにドカッと腰を下ろし、長い脚を組みながらそう言った。当然ながら、菊子さんの事を聞いているに違いない。


「浅井菊子さんにはキッパリ断った」

「だよな。それで? 結婚の相手探しは振りだしか?」

「いや、そんな事はない。実はもう決めたよ」

「そうなのか? どこのご令嬢だ?」

「なんだよ。おまえもそういう事、言うのかよ……」


俺は兼続の言葉に、少しだがムッとしてしまった。

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