未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
「お帰りなさいませ」


屋敷に戻ると、玄関で爺やがうやうやしく俺を出迎えてくれた。が、小松はいない。昨日は小松も出迎えてくれたのだが……


「ただいま。小松は?」

「外出されています」

「ふーん、どこへ?」

「存知ません。“ちょっと出掛けます”としかおっしゃいませんでしたので……」

「そうか……」

「ですが、もうそろそろ戻られる頃かと……」

「あ、そう」


俺は自分の部屋に戻りつつ考えた。行き先を告げずに出掛けたという事はどういう事かと。

あ、そうか。おそらく小松は、またあのアパートへ行ったに違いない。伊達政宗という男の元へ……


そう考えた瞬間、俺は頭にカーッと血が上った。これからあそこへ行き、無理やりにでも小松を連れ戻そうかと思った。そして、二度とあの男に会うなと命令しよう、とも……


いやいや、それはやり過ぎだ。あの男は、なぜか小松に手を出さない。誠実なのか、単なる友達なのか、あるいはゲイなのかはわからないが。

であれば、ここは我慢だ。我慢しよう。それが大人というものだ。正直、小松が他の若い男と仲良くするのは、物凄く気に入らないのだが……


待てよ。小松はあの男に俺との事は話したのだろうか。もし、それを話しに行ったとして、男が逆上したとしたら……


いかん! 小松の身が危ない、かも……


俺が慌てて玄関へ引き返したら、ちょうどその小松が戻って来たところだった。

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