未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
慶次が箱を開けると、中には普通にチョコレート色したチョコが6粒ほど入っていた。


「どうぞ?」

「お、おお」


俺はその一粒を指先で摘むと、ほんの少しだけ前歯で噛んでみた。すると……

あれ? 甘くない気がする。むしろしょっぱいような……


「どう?」

「ん……分からない」

「そんな“チョコ”っとだからだよ。あ、今のはシャレね?」

「え? ああ……」


面白くない。と言うか、今はそれどころじゃない。


「ちぇっ。そんな難しい顔してないで、パクっと行っちゃいなよ?」

「そうだな」


俺は指先で摘まんだ一粒のチョコを、パクっと口に放り込んだ。すると……甘……くない。それどころか、なんとしょっぱかった。それもかなりのしょっぱさで、例えるなら塩飴か。

いや、そんなもんじゃないな。甘さは全く微塵も無く、やたら塩っからい。例えるなら、そう、梅干みたいなしょっぱさだ。


「どう? 信之さんには甘過ぎるでしょ?」

「え? いや、そうでもない」

「おかしいなあ。すごく甘かったけどなあ。あ、僕のと信之さんのは甘さが違うのかな。砂糖の分量を変えたとか……」

「かもな」

「一つ頂戴?」

「あ、それは止めた方が……」


俺が制止する間も無く、慶次は小松のチョコを一粒摘まんでポイっと口に放り込んでしまった。


「ん? ……ぐぇー、何だコレ! しょっぺー!」


慶次は目を丸くし、次にあからさまに顔を歪め、嫌そうな顔をした。

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