未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
「信之さん、これはきっと嫌がらせですよ。普通なら砂糖と塩を間違えたんだろうってなりますけど、僕が貰ったチョコはそんな事なかったですからね。わざとですよ、これは……」


慶次は何やら興奮気味に喚いていたが、俺はそれどころではなかった。つまり、一番若い使用人である小松から貰ったチョコはしょっぱかったという事実。それは正にあの未来から来たらしい女性が言った事で、ものの見事に当たったという事だ。

それは即ち、あの女性が本当に未来から来たという事の証にほかならない。

という事は……

俺はあの女性と結婚するのかあ。今まで会った事もなく、名前すら知らないあの女性と……


「信之さん、腹が立ちますよね? 小松ちゃんはクビですかね?」

「え? いやあ、それは……あっ」


待てよ。確かあの女性はこう言ってたはずだ。しょっぱいチョコを貰い、俺が怒っていたと。だが、それはどうだろう。俺は怒っているのか?

いいや、それはない。あの女性の予言じみた言葉が本当かどうかの方が気になり、怒るどころの状況じゃない。それに……

そうだよ。昨夜俺は小松に言ったんだ。甘い物は苦手なんだと。ココアを淹れてくれそうになった時に。だから、急遽小松は俺にはしょっぱいチョコを作ってくれた。そう考えるのが自然じゃないのか?

うーん、確かにあの女性は未来から来たのだろう。だが、その未来は少し変わって行くのかもしれない。奇しくもあの女性が言ってたな。未来を知ると未来が変わると。

なるほど。であれば、俺があの女性と結婚しない、という選択肢も、あるのかもしれない……

< 24 / 177 >

この作品をシェア

pagetop