未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
「信之さん、もしかして何か心当たりがあるんですか? それで小松ちゃんのチョコの味を確かめたかった。違いますか?」


慶次が、何やら探るかのような顔付きでそう言った。もちろん“心当たり”はアリアリなのだが、未来から来た女性の予言、なんて事を慶次が知るわけもなく、それを言うつもりもない俺は、どう返していいか分からなかった。


「な、何の事かなあ」

「だから、信之さんは何かやらかしたんじゃないんですか?」

「俺、いや僕がか? 僕は何もしてないぞ」

「そうかなあ。例えば小松ちゃんの体に触るとか、無理やり付き合わせようとしたとか……」

「ま、まさか。そんな事はしてない」

「そうかなあ。じゃあ、何で小松ちゃんはこんな仕打ちをしたんですか? 信之さんに恨みを持ってるとしか思えないけどなあ」


慶次の言いたい事がようやく理解できた。確かにそういう考え方もあるだろう。しかしそれは全くの思い違いであり、その誤解を解かなければ、俺に関して不名誉な噂が流れかねない。

という事で、チョコに関してだけは本当の事を慶次に言おうと思った。全く問題ないはずだし。


「そうじゃないんだ。小松は僕が甘い物が苦手だと知ったから、それで急遽しょっぱいチョコを作ってくれたんだと思う」


それは全くの事実だし、慶次はこれですんなり納得するだろう。そう思ったのだが……

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