未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
「ところで、あなたは私の名前を知ってたけど、今日はいつなの?」

「え? それ、本気で聞いてます?」

「もちろんよ」


と言った菊子さんの目はまだ泳いでるようにも見え、見え透いた芝居のような気がしないでもない。


「前回から何日も経ってませんよ」

「あ、そうなんだ……」

「僕は明日あなたに会う予定です。この屋敷で、“初めて”」

俺はわざと“初めて”を強調して言った。もちろん嫌味のつもりで。

「ああ、私が初めてこのお屋敷に来た、あの日の前日なのね?」

「そういう事です」

「そうなのね……。あのね、本当は未来の事を言っちゃダメなんだけど、何日か後には、あなたから正式なご返事を頂くのよ?」

「へえー、何のですか?」

「もちろん私達の結婚のよ」


さっきまでとは一転し、菊子さんはキッパリした口調でそう言った。俺は一瞬それに気圧され、言葉が出なかった。そして、“そうだったのか……”と思いそうになった。

いやいや、騙されていけない。そう、これはおそらく俺と結婚するために仕組んだ芝居に違いないんだ。真田家の財産目当てに……


「素朴な疑問なんですが、どうして本当は言ってはいけない未来の話をするんですか?」


俺は菊子さんの矛盾を指摘してみた。果たして彼女は、どんな反応をするんだろうか……

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