未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
「未来が不安になったからよ」
俺の意に反し、菊子さんは全く動揺した様子もなく、はっきりとそう言った。
「と言うと?」
「私が下手にタイムスリップなんかしちゃったから、あなたは本来知るはずのなかった未来の事を知ってしまったわ。その影響で私、ううん、私達の未来が変わったら困るのよ」
「つまり、僕と結婚出来なくなったら困るわけですか?」
「当たり前でしょ?」
「へえー、そうですかねえ。見たところ、あなたは僕の事をさほど好んではいないと思いますけどね」
どうせ財産目当てなんだろうけど、さすがにそれは言わないでおいた。
「そんな事もないけど、一番困るのは、信吉の存在が消える事なの」
「……信吉?」
菊子さんの口から聞きなれない名前が出て、俺は首を捻った。
「あ、いけない。私ったらつい名前を言っちゃったわ。言うべきじゃなかったのに……」
菊子さんはさも“しまった!”というように口を手で押さえた。
「その人は誰なんですか?」
「彼はね……」
菊子さんはもったいつけているのか、いったん言葉を切って俺の目を覗き込むように見た。それで俺も、思わずゴクっと唾を飲み込むのだった。
「息子よ。もちろん私達の」
俺の意に反し、菊子さんは全く動揺した様子もなく、はっきりとそう言った。
「と言うと?」
「私が下手にタイムスリップなんかしちゃったから、あなたは本来知るはずのなかった未来の事を知ってしまったわ。その影響で私、ううん、私達の未来が変わったら困るのよ」
「つまり、僕と結婚出来なくなったら困るわけですか?」
「当たり前でしょ?」
「へえー、そうですかねえ。見たところ、あなたは僕の事をさほど好んではいないと思いますけどね」
どうせ財産目当てなんだろうけど、さすがにそれは言わないでおいた。
「そんな事もないけど、一番困るのは、信吉の存在が消える事なの」
「……信吉?」
菊子さんの口から聞きなれない名前が出て、俺は首を捻った。
「あ、いけない。私ったらつい名前を言っちゃったわ。言うべきじゃなかったのに……」
菊子さんはさも“しまった!”というように口を手で押さえた。
「その人は誰なんですか?」
「彼はね……」
菊子さんはもったいつけているのか、いったん言葉を切って俺の目を覗き込むように見た。それで俺も、思わずゴクっと唾を飲み込むのだった。
「息子よ。もちろん私達の」