未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
「私、そろそろ帰るわね?」

「あ、はい。未来に帰るんですよね?」


突然帰ると言った女性に、俺は少々皮肉を込めてそう言った。


「も、もちろんよ。いい? 私の事は忘れてね?」


女性はそう言うと、布団の中で何やらゴソゴソやり出した。


「何をしてるんですか?」

「シーツで体を隠そうとしてるのよ」


ああ、そう言えば女性は全裸だもんな。でも、何でだ?


「なんで何も服を着てないんですか?」

「タイムスリップするのは体だけなのよ」


ああ、なるほどね……
それは理に適ってる気がするなあ。もしかして、本当の話なんだろうか。いや、そんなはずは……

あ、そうか。


「別にどこかへ行く必要はないですよね?」

「え?」

「今すぐここから帰ればいいじゃないですか? 未来とやらに……」

「それはそうなんだけど……」

「第一、裸でうろうろしたら怪しまれますよ?」

「そうなんだけど、自分じゃ上手くコントロール出来ないのよ……」

「僕はいつまで掛かっても構いませんよ?」


もし俺の目の前で女性が消えたら、彼女の話を俺は信じざるをえないだろう。だが、やはり嘘だとしたら、女性は困り、終いには嘘だったと白状すると思う。

我ながら上手い考えだなと思い、ついニヤけてしまう俺だった。

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