未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
女性は目を瞑り、精神集中か何かをしているようで、そんな彼女を俺は横になって眺めていた。しばらくすると、女性はパチっと目を開き、再び布団の中でゴソゴソやり始めた。


「どうしたんですか?」

「オシッコよ」

「ああ、それなら僕が案内します」


俺は起き上がり、女性をトイレに案内しようと思ったのだが、


「結構よ」

「いや、迷うといけないですから……」

「大丈夫。私だってこの屋敷の住人なんだから」


なるほど、未来の住人って言いたい訳か……


女性は布団から出てベッドを降り、白いシーツを優雅な動作で体に巻き付けた。その時につい見てしまったが、なかなかのスタイルだった。

そして女性は背筋を真っ直ぐに伸ばし、絨毯の上をスタスタと歩いて部屋を出て行ったが、ものの10秒かそこらでコンコンと扉をノックする音がした。


「開いてますよ」


てっきり女性がUターンして戻って来た、とばかり思ったのだが……


「旦那さま、メイドです。ドアを開けてもよろしいでしょうか?」


明らかにあの女性のとは異なる、若い女性の声が返ってきた。

< 8 / 177 >

この作品をシェア

pagetop