未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
「おい、どうした?」


兼続が、写真を見たまま固まった俺に声を掛けてきた。しかし俺は、小松の事を兼続に言えない。正確には、言ってもいいが今はその気になれない。説明するのが面倒なのと、自分で考えるのに忙しいからだ。


「まさかおまえ、悠長に“この子、可愛いな”なんて考えてるんじゃないだろうな?」

「え? おまえ、そう思うのか?」

「冗談だよ。こんな時に、そんなわけないもんな?」

「いや、そうじゃなくて、おまえはこの子の事、可愛いと思うのか、と聞いてるんだ」

「何? そっちか? そりゃあ、思うよ。滅多にお目にかからない程可愛いんじゃないか、この子……」

「そうか。そうだよな? チクショー、可愛いんだよなあ……」

「おい、大丈夫か? あまりのショックで頭が変になっちまったか?」


確かにそうかもしれない。ただし、兼続は菊子さんと慶次の件で俺がショックを受けたと思ってるだろうが、そうではない。俺がショックを受けたのは、小松が嘘をついてた事と、更に発生した疑惑についてだ。


「兼続、色々ありがとう。俺は家に帰るよ」


とにかく帰ろう。そして、確かめなければ……


「そうか。菊子さんとの結婚はやめるよな?」

「たぶんな」

「たぶん?」

「とにかく確かめてからだ」

「確かめるも何も、はっきりと証拠が……」

「すまん、本当に帰る。おまえには後で詳しく話すから、今は勘弁してくれ」

「詳しくって、おまえ、いったい……」


怪訝な顔の兼続を残し、俺は役員室を飛び出した。一刻も早く帰り、小松の真意、あるいは正体を確かめたくて。

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