未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
小松と共に屋敷へ戻ると、俺達を見て爺やが目を丸くした。俺がヒロミを抱えていたからだ。


「見つけられたのですか?」

「うん、この通りさ。小松が見つけてくれたんだ」


咄嗟についた俺の嘘に、横にいる小松は小さく息を飲んだ。


「小松、お手柄ですね?」


爺やのねぎらいの言葉に、小松は戸惑いながら、すがるような目で俺を見上げた。


「改めて礼を言うよ。ありがとう、小松……」


顔に作り笑いを浮かべて俺がそう言うと、小松は一瞬瞳を揺らし、俯いた。俺の意図を汲み取ったようだ。

そう、俺は菊子さんと慶次、そして小松達がした企みを、みんなには明かさないつもりだ。そうしないと、これから俺がする事に都合が悪いからだ。


「小松、着替えてきなさい。お客さまがお越しですよ」

「あ、はい」

「それはしなくていい」


爺やに言われ、着替えをしに行きかけた小松であったが、俺は彼女の小さく華奢な肩を掴み、自分に引き寄せた。


「だ、旦那さま……?」

「爺や。悪いけど小松は今から僕の専属にする。僕の言う事だけを聞いてもらう」

「急にそう言われましても……」

「ダメなのかい?」

「そんな事はありませんが、本人の意思も尊重しませんと……」

「小松は承諾しているよ。ね?」


小松を見やると、彼女は弱々しくではあるが、はっきりと頷いた。


「そういう事でしたら、まあ、よろしいのでは……」


爺やは不服そうではあったが、さすがに当主の俺に逆らいはしなかった。考えてみれば、この屋敷で俺が我を通したのは今のが初めてかもしれない。そしてそれは、まだまだ続くのだ。

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