そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】

「ほら、以前、お話ししたでしょ?小林ユウキとトラブルを起こした女性のこと」

「あ、あぁ……赤ちゃんを連れた女性がユウキをナイフで刺そうとしたって、アレ?」

「そうです!なんでも、お母さん達の事件を新聞で読み"小林"って人が被害者だと知って、小林ユウキが巻き込まれたんじゃないかと心配になり来たと言ってました」


おかしな話しだと思った。


「新聞には、被害者はちゃんと"小林陸"って載ってましたよ。なのになんでユウキのことが心配になったんですか?」

「それがですね、彼女、小林ユウキの下の名前を知らなかったんですよ」

「はぁ?何ソレ」


信じられないことだけど、その彼女はユウキの本名を知らないまま付き合っていたそうだ。


いや、それは正確じゃない。彼女は付き合ってたと思ってたけど、ユウキはただの遊びだったようで、彼女が妊娠したと知るや、全く連絡が取れなくなってしまった。


でも、ユウキのことが好きな彼女は、どうしてもユウキを忘れられず子供を産む決心をした。子供が産まれればユウキの気持ちも変わるんじゃないかと期待して……


しかし、子供が産まれたと何度もメールしたけど、ユウキから返信はなかった。


ショックを受けた彼女は、ユウキの勤め先である大和商事に乗り込み直接ユウキと話そうとしたそうだ。


子供を見せてもユウキが自分を拒否した時は、ユウキの目の前で自殺する覚悟でバックにナイフを忍ばせて……


「でも、ユウキは拒否したんですね?」

「はい、拒否するだけじゃなく酷い言葉を浴びせられたそうです。それで、気付けばナイフを振り回していた……」

「でも、そんな酷いことされたユウキを心配って、おかしくないですか?」


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