そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
私の質問におっちゃんが大きく頷く。
「ですよね。普通なら心配なんてしませんよね。でも、彼女は心配で居てもたっても居られなかった。小林ユウキのことが、まだ好きだったんですよ」
「マジですか?」
「はい、でもですね~ちょっと困ったことになりまして……
小林ユウキは事件には関係ないし無事だと言ったら、どうしても彼と話しがしたいから連絡をくれるように言ってもらえないかと頼まれましてね。
初めは断ったんですが、泣かれたら断りきれなくて……
でも不思議なことに、あの事件以来、小林ユウキの姿が見えないんですよ。販売部に聞いても何も教えてくれないし」
当然だ。ユウキは多摩雄のおっちゃんが預かっているんだもん。
「彼女、近々、実家のある沖縄に帰るそうで、そうなると、もう二度と会うこともない。だから最後に一度でいいから子供を抱いて欲しい……って言ってたんですよ。なんとかしてあげたいんですけどね……」
困り果てた様子のおっちゃんが気の毒だと思ったのもあったけど、その彼女のことが可哀想で、ついお節介なことを言ってしまった。
「私がなんとかするから……」
「えっ?本当ですか?なんとか出来るんですか?」
「うん、だからおっちゃんは警備に専念してよ」
それでなくても頼りないんだから。
「いやぁ~有難うございます!助かりましたー!」
待ち合わせしていた友達が来たと席を立つおっちゃんに手を振りながら、私は自分に呆れていた。
自分のことで一杯一杯なのに、何やってんだろう……
でも、酷い仕打ちを受けてもユウキを好きなその彼女のことが不憫で、彼女の願いを叶えてあげたいと思ってしまったんだ。
「鈴音さん、お待たせしました」
「弁護士先生……」