そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
どうする?居留守を使うか?でもマンションの外で張り込みとかされてて出たとこを見つかったら罪が重くなったり?
やはり反省していると印象付けた方がいいのか?そうだ。決して悪意があったワケじゃない。警察の人だって人間だもん。話せば分かってくれるはず。
震える指でモニターの下のボタンを押し、今から下に降りて行きますと伝え風呂敷包みを背負い部屋を後にする。そして、エレベーターの中で涙ぐみながらばあちゃんに詫びた。
ばあちゃん、ごめんな……私、逮捕されるよ。ばあちゃんの言うこと聞いて島に居れば良かった。東京なんて来なければ良かった。
後悔先に立たずとは、よく言ったものだ。
ガックリ肩を落とし玄関の扉を開けると、さっきモニターに映っていた見知らぬ男性がゆっくり近づいて来て私の前に立った。
観念し頭を下げ両手をソッと前に差し出す。
「なんですか?この手は?」
「悪気はなかったんです。本当です。信じて下さい。ごめんなさい」
「私はあなたに謝られるような覚えはありませんよ」
そう言った男性が私の差し出した手に何かを握らせた。
「えっ……名刺?」
「初めまして。弁護士の小林宅磨(こばやし たくま)です」
「弁護士?」
警察より先に弁護士が来た……私が罪を犯したって、もう知ってるの?……弁護士の情報網って凄過ぎる。
「小林鈴音さんに大切なお話しがあります。少々お時間宜しいですか?」