君のせい
黒いタオルの下から見える、少し濡れた前髪
上目で私を見つめている大きな瞳
「全然、走ってないし」
呼吸を整えながら、苦し紛れにそう言うと、
吉井の大きな瞳がくしゃっとして、かわいく笑い出したから、
どうしようかと思った。
吉井は頭のタオルをパサッと後ろに回して、
首にかけた。
濡れた髪が顔にかかって、
いつもの爽やかな吉井じゃなくて、
ちょっと大人っぽくなったから、
また心拍数が上がってしまい困った。
頬が熱い。
吉井は私に一歩近づいて、傘に手を伸ばした。
「俺が持つよ」
そう言って傘の柄を掴んできたから、
私はそっと離した。
向かい合って立っていたら、吉井が傘を差しながら、
私の頭をぽんぽんと優しく撫でてきた。
「さわるな......バカ」
吉井の差す傘の中、
頬を熱くしながら、下を向いてそう言うと、
「はいはい」と、
優しくまたぽんぽんと撫でられた。
「走ってなんかないし」
「はいはい」
「別に吉井のために駐輪場まで来たんじゃないし」
「わかったわかった」
「風邪ひかれたら、航太が困るから」
その時、頭から手を離し、私の顎をくいっと持ち上げた。
「お前は?」