Eternal Silence
指示の最後と同時くらいに
関係スタッフは医局を飛び出し、
他スタッフも指示された行動を
全て終えるとそれぞれの作業に戻る。
「安田、
さっき……カルテ見てたな」
「あっ、はいっ。
保井のお婆ちゃん、
次回の発作が起きたら【要バイパス】でした」
「成元医師、
オペの為に飯村先生と院長に連絡しました」
「水谷君、オペの準備を。
安田、院長の息子連れて……お前も勉強しろ」
「はいっ」
成元御大は
慌てて医局を飛び出していく。
救急車のサイレンが
聞え始め慌しくなる院内。
オレが二人を連れていった時には、
すでに処置室は戦場。
室内を忙しなく
動き続けるスタッフを
必死で視線で追い、
処置をしている姿を焼付けながら、
オレもモニターを見つめる。
「PTCAで行くか?」
PTCA=
percutaneous transluminalcoronary angioplastyの略で
経皮的経カテーテル的冠動脈形成術のこと。
俗に言う、風船治療。
「遅れてすいません」
遅れて入ってきた
飯村医師は検査データー等に
目を素早く目を通す。
「水谷さん、院長を」
「大丈夫。
こうなると思ったからすでに
成元医師とスタンバイ済み」
「有難うございます」
それだけ言うと……
患者さんを手術室へと運んでいく。
オレは……
院長たちの動きを
自分の瞼に焼き付ける。
オレも一人前になる。
そして……一日も早く、
院長の手助けが
出来るようになりたい。
自分の中に目標を宿し……
刻み込む。
ERデビューの前夜は
慌ただしく過ぎていく。
鳴りやまない救急車のサイレン。
慌ただしい現場。
明日の夜には……
オレもこの場所で駆け回る。