もう一度、君と…。


全ての道が正しかったとは、言い切れない…私の人生。

試行錯誤…これを繰り返しながら…。

もう前を見て、進もうと思う。

…そして、裕貴君が望んでいる。

前を見て、笑わなきゃ。

絶対に裕貴君は忘れない。

もう忘れるなんてできっこない。

ネックレスを見て…、ブレスレットを見て、君の生きていた頃を思い出す。

君とキスしたコト。

抱き締めて貰ったコト。

一つひとつ…鮮明に。

…一生懸命に生きていた裕貴君みたいに、私も生きよう。

裕貴君の『愛してる』の言葉も…。

おとぎ話にしてはいけない。


前の私は、全てを失うコトを恐れてて前を見ていなかったし、進むコトさえおろそかにしていた。

…でも、もう大丈夫。

全てじゃない。

私には百合がいる。

実波君もいる。

慶ちゃんもいて、バスケ部の後輩だって…。

羽翼のメンバーだって…。

そして、絶対に裏切らない家族がいる。


「…多和、私はもう一人でも大丈夫だよ」

私は周りに聴こえない様に呟いた。

私は多和の存在を頼りにしなくても、大丈夫。

きっと、今の私は清々しい表情をしていると思う。


< 149 / 291 >

この作品をシェア

pagetop