悠久幻夢嵐(2)-朱鷺の章-Stay in the Rain~流れゆく日々~


「さて、教室へ行こうか」





マイペースな担任は、
そう言うとドアを開けて
ゆっくりと廊下を歩いて行く。



部屋を出る間際、
動きがほぼ、
朱鷺宮と同じになった俺は
その場で立ち止まる。


朱鷺宮が指をすっと出して、
合図を送ったのを確認して
一礼して、俺は先に部屋を出た。




その直後から、
感じる鋭い視線。





朱鷺宮の目は
絶えず笑みを
纏うものの、
その視線だけは隠そうとしない。





「さぁ、教室じゃ」




急に立ち止まった担任に気が付いて、
慌てて立ち止まると、
俺の隣に静かに並んだ朱鷺宮は、
俺を見て含みのある笑みを見せた。




「起立~」



教室の中から声が聞こえて、
ガサガサと音が聞こえる。




「徳力、朱鷺宮
 教室へ」



担任に促されて一歩踏み入れた途端、
まずびっくりしたのは、
教室の狭さ。


今まで通いなれた、
神前悧羅学院の広い空間に、
少数精鋭教育と違って、
教室の広さと生徒数の割合。


狭すぎるだろ。



小さな机とロッカーだけが
プライベートスペースかよ。




小さな溜息と共に、
教室の中に踏み入れる。




教室の中は、男・男・男。





……飛翔……


お前の母校は、
男子校だったのかよ。


それを早く言えよ。








グルリと視線を教室へと向ける。






「神前悧羅学院悧羅校から転校生。
 徳力神威くんだ」

「徳力です。

 神前悧羅学院とは違った
 校風のこの学校で
 卒業までお世話になります。

 宜しくお願いします」




戸村から言葉を受けて、
ゆっくりとお辞儀をした途端、
俺と視線をあったヤツが、
一瞬、軽蔑の眼差しを投げかけると同時に
椅子から立ち上がると、
床に膝をついて、
深々とお辞儀をした。




そんな異様な光景に、
クラスが騒ついて声をあげる。





「虹也(こうや)、
 お前何やってんだよ」





立ち上がって、
ソイツの傍にいく、友達らしいヤツ。



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