悠久幻夢嵐(2)-朱鷺の章-Stay in the Rain~流れゆく日々~


「おいっ、いい度胸だ。

 徳力、
 前に出てこの問題を解いてみろ」



そう言って上から目線で押し付けてくる
講師陣に半ばうんざりしながら、
邪魔くさそうに机から立ち上がる。



手元のノーパソのデーターを
転送して、中央モニターに
送る神前悧羅のシステムと違って
いちいち机から離れて、
教室正面のボードに答えを書き込んでいく
アナログ授業。



そして……すでに悧羅校では
勉強をし終えた学習内容。




半ば、呆れたように
教室に答えを書き込んでいくと
クラスの奴からは、
感嘆の声やら、
称賛の声が飛び交う。




「徳力、出来るからと言って
 授業中、
 緩み過ぎてもいかんぞ」



退屈な授業はそのまま、
ゆっくりと流れ
やがて休憩時間に変わる。






俺ら転校生ってのは、
話のネタになりやすいのか、
休み時間の度に、
何人かの奴が近づいてくる。




徳力の当主としての
俺の存在を一族主催のパーティーで知っている連中やら、
単純に興味本位の奴。

さっきの『生神』発言がお気に召したのか、
その話題を探ろうと近づいてくるもの。





何一つ答えずに、
一瞬、ギロリと睨んでわざと音を立てて立ちあがると
俺を取り囲んでいた奴らは、波が引いていくように
朱鷺宮の方へと流れて行った。




昼休み、すでに面倒臭くなった
俺は飛翔の隠れ家へと身を隠す。







校舎の屋上で、太陽の光を浴びながら
ゴロリと体を伸ばすと、
ポカポカとした陽気が眠気を誘う。



時折、肌をくすぐる微風が
更に心地よかった。






ゆっくりと目を閉じて、
深呼吸。








その時、
聴覚を刺激した音が
何時もの感覚と違った。




それは、言葉にするのも難しい
微妙な違和感。





そんな違和感に、
ある意味懐かしさを感じながら
飛翔の隠れ家で過ごし続ける俺に
背後から声がかかる。





「君は教室で過ごさないの?」







慌てて体を起こすと、
人気がないはずの隠れ家に、
朱鷺宮の姿があった。





「朱鷺宮」





何故此処に?



っと続く言葉は飲み込んで。


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