悠久幻夢嵐(2)-朱鷺の章-Stay in the Rain~流れゆく日々~


「古の世より、
 この世界を導き、支配し、
 守り続けた、秋月・生駒・徳力。

 影宮(かげみや)の長」




静かに語るように口を開いた
朱鷺宮は、ゆっくりと近づいて
更に言葉を繋げる。



「徳(解く)を重(おも)んじ、
 その力を持って、宝と成す」




何を言ってるんだ?





「どうした?
 
 現行、影宮の長は
 何も知らぬまま育てられた
 赤子のままの存在。


 君を知る存在とすら、
 まともに向き合うことを知らない
 幼子のまま」





朱鷺宮に対して、
睨み続けるものの、
距離は縮まるばかり。



何を言ってんだ?


コイツ?






ふと……そいつが、
俺の左首を掴み取る。




振り解くように抵抗をした
左手はすぐに解放された。





「そう……。

 力(りょく)の龍は眠っている。

 その存在の未熟さ故に……。

 そう言うことか……」





力の龍?だと?






朱鷺宮から紡がれる言葉は、
いちいち俺を焚き付ける。





「朱鷺宮。

 その口を閉ざせ。

 そして今すぐ、
 この場所から消えろ」





そう言うのが……
精一杯で。






「そうだね。

 力が眠りし、宝(ほう)には
 俺も興味が失せた。

 
 雨が降りそうだ……」




朱鷺宮は、そう言うと
屋上からゆっくりと姿を消した。





雨だと?




降るわけねぇだろっ。


こんなに晴れてんだぞ。





紡がれた言葉を
思い起こしながら、
再度、奥所に寝ころぶと
突然の雷鳴と共に、
周囲が暗雲に閉ざされる。




その雲の合間から、
時折、見える……金の龍。
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