悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence

23.慈しみの雨 -由貴-



勇が手配したドクターヘリが姿を見せた直後、
安倍村に到着した時雨が総本家へと顔を出した。



「由貴、飛翔は?」


ヘリの扉が開かれると同時に
私の元に駆け降りてきたのは勇。


そして勇の後ろには裕さんともう一人、
年配の人が姿を見せる。



「裕、華月さんは私が処置する。
 裕は柊佳さんを頼む」


ヘリから出てきたその人は、
真っ直ぐに華月さんと闇寿さんの方へと行く。

そして裕さんは指示通り、私の方へと駆けつけた。



「氷室君、状況は?」



問いかけに答えられる範囲で、
状況を説明して、巫女のことを託すと
そのまま飛翔と神威君の方へと移動する。




「由貴、こっちだ。

 さっき、この辺りの地図を闇寿さんだったか、
 詳しそうだったから質問して、居場所を確定した。

 行くぞ」



時雨の声に導かれるように走っていくと、
その後を、勇がついてくる。



「時雨、あそこ」




私が指をさした向こうには、
海の方へと真っ直ぐに歩いていく神威君と、
砂浜に倒れている人影。



そんな中に、フラフラになりながらも
立ち上がっては村人たちに向かっていく飛翔の姿を確認した。




「飛翔」
「飛翔」
「飛翔」




三人が飛翔の名を呼びながら
駆けつける砂浜。



「バカ野郎。
 神威っ!!」



ふらふらと海に向かう神威君の腕から
引きずっているのは
手を後ろに結ばれたままの縄?

白装束の男たちと揉みあいになる飛翔。
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