悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence


*




次に目が覚めた時、そこは見た事のある部屋。





神前が動いたのか……。

ホームドクターを務める、神前が動いたのだと把握して
ベッドの中から体を起こす。






近くには……アイツの姿があった。





「起きたのか……神威」




短く告げたアイツの言葉が、
今は優しくボクの中に広がっていく。



「とりあえず起きたら検査だと。
 一通り、検査して異常が出なかったら退院だ。

 遅くなって悪かったな」




事務的な口調で状況を説明した後に、
小さく隠れ見えたアイツの心。



「遅すぎる。
 来るならもう少し早く来い」


照れながら勢いに任せて吐き出した言葉に、
アイツはムカつくことにボクを子ども扱いして
ワサワサと髪を掌で撫でつけた。








金色の雨。


黄金の龍。






今のボクは当主だけど、
何の権力も持たない子供でしかない。





徳力においての真の当主は、
雷龍翁瑛をその身に宿すこと。







本当の意味での当主になりきれないまま
海に還るのは嫌だ。




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