悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence


伊舎堂裕(いさどう ゆたか)、
伊舎堂裕真(いさどう ゆうま)。



戸籍上の、勇の弟であり、
同級生の千尋君の従兄弟になるのかな。


勇も小さい時から親しくしてきていたから
鷹宮から緒宮に大学時代に、苗字が変わった後も
交流を続けているみたいだった。




「もしもし勇人です。
 忙しい時にすいません。

 徳力飛翔、今は苗字が変わって
 早城飛翔ですが覚えてますか?
 元、昂燿校の。

 彼の故郷が大雪の被害にあったようで、
 兄さんのところに情報があれば教えて頂きたいんです。

 後、出動が出来るならドクターヘリは飛ばせませんか?」



そう言って勇が話しを切り出しながら、
後は頷き続けて、「お願いします」っと電話を終えた。



私と妃彩さんが不安そうに視線を向ける。



「おぉ、勇人。
 後、氷室君だっけ、此処に居たのか」


ふいに教会のドアが、病院側から開いて
ドクターコートを羽織った人が姿を見せる。



「嵩継さん」


嵩継さんっと勇が呼ぶ人の名前は、
安田嵩継【やすだ たかつぐ】。

勇にとっては、お兄さんのような存在で
私も飛翔も大学時代から、何度か嵩継さんの行きつけらしい
小料理屋へとお邪魔して食事をした。


嵩継さんの大切な人のお母さんが一人で頑張り続ける小料理屋は、
とても居心地がよい空間だった。



「勇人には言ったが、氷室君も試験お疲れさん。

 後はもう、じたばたしたって仕方ねぇ。
 四月から一緒に働く同僚になるって、念じててやるよ。

 それより今日は、早城は?」


私のことは、氷室君と呼びながら
飛翔のことは呼び捨てにする嵩継さん。


「嵩継さん、飛翔は今日は休みです。
 飛翔の故郷が、大雪の被害にあってるみたいです」

「大雪の被害って、朝からニュースやってたアレか」

「はいっ」

「わかった。オレも院長に持ち上げてみる。
 四月から同僚になる予定の奴のことだからな。

 まっ、そっちの方は任せとけ。

 お前らは、院内ボランティア頼むな。

 春宮さん、教会である程度過ごしたら
 昼前には一度、センターの方に戻っててくれよ。

 センターの住人達に、
 編み物教えて貰わないとだからな」

「はい」


妃彩さんが返事をすると、嵩継さんは慌ただしく、
教会から飛び出していく。
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