悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence


「はい。早城です」

「先生、オンコールです。
 救急車、後15分で三台目が到着予定です」

「わかりました。
 15分以内に入ります」


電話をしながら着替えを済ませて、
鞄を持つと慌てて神威の部屋へと向かう。

ゆっくりと眠っているのを確認して、
そのままマンションの鍵をかけて愛車の方へと向かう。


病院との電話を切って、華月に一本鷹宮に行くことを伝えると
そのまま病院へと速度をあげた。


病院に駆け込んだ時には、病院内は慌ただしくバタバタしていた。


「遅れてすいません」

「大丈夫よ。早城先生、夜分に召喚してごめんなさいね。
 甥子さんは大丈夫?」

「今は眠ってますし、任せてきましたから。現状は?」



そう言って現状を確認しながら受け入れ態勢を確認していく。
 


救急車が到着を告げて、慌ただしくストレッチャーが運び込まれてくる。
城山先生をパーティーリーダーに治療を終えて、その後も
続く救急車に対応を重ねて解放された頃には朝になっていた。



「お疲れ様。
 もう落ち着いたから、早城は帰っていいよ。
 今日はもうオフだろ。

 後は私たちが対応しておく。
 神威君のところに帰ってあげなさい」

「有難うございます。
 お先に失礼します」

「お疲れ様でした」


見送られながら処置室を後にすると、
医局で由貴と交代して、マンションに戻るために病院を後にした。


駐車場に向かう途中、勇の姿を目撃する。


「勇、今日は終わりか?」

「今は僕はオンコールだから。
 少し妹に会って来ようと思って」

「そうか……」

「飛翔は?」

「俺はオフ。
 オンコールで夜に呼び出されて今解放されたところかな」

「神威君や、飛翔の家のほうはどう?
 由貴ほど僕は飛翔のことを詳しいわけじゃないけど、
 何か近くで見てると、いろいろと抱えてそうだなっていうのは感じるから」

「まぁな。今もどうしていいかわかんないよ。
 目に見えることなら何とでも解決のしようがあるんだろうけどな」

「目に見えないことで悩んでるんだ。
 そうだね……目に見えないことって、本当に迷宮にはまってしまうと
 解決策が見えなくて入り込んでしまうよね。

 だけど……飛翔が神威君の近くに親身になっているって言うのが
 ただ伝わるだけで大分、安心感は得られるんじゃないかな。

 僕もそうやって自分で心がけてるから。

 さっ、行かないと。妹との待ち合わせ時間が来ちゃうから」

「あぁ」

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