悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence


「飛翔さま、どうぞこちらの防犯カメラのデーターをご確認ください」



そう言って万葉が開いた映像は昨日のあの神社の少女が映る映像。


「当デパートのカメラが最後にとらえたのは、
 3階のレディース服の南側のお手洗い前。

 この場所で、一人の男の子を保護して1階のインフォメーションセンターへ。
 インフォメーション前で子供の保護者と対面した直後、
 彼女は南出口から飛び出して店内を後にています。

南出口から飛び出した場合、街中にあるカメラは5か所。

 各企業関係者に協力を要請して、確認させて頂きましたところ
 譲原咲さんが確認されたカメラは、最初の2か所まで。

 紫陽花公園と呼ばれているあの場所で彼女は忽然と姿を消しているようです。

 今朝方、桜塚神社の咲久殿からも、孫が帰宅しないと連絡がありました」



一礼して万葉は状況を告げた。




消えた少女の謎って、神隠しか?
しかし、非日常的な出来事が次から次へとおきやがる。 
  




「華月、お前は神威を頼む。

 万葉、昼には鷹宮に戻らないといけない。
 本社からヘリで、桜塚神社に向かう。

 万葉も頼めるか?」

「はい。至急、ヘリの手配をします」



病室を飛び出して、本社まで俺の車で向かうと屋上まで駆け上がって
用意されたヘリへと乗り込む。

ヘッドセットをはめて、外側からドアが閉じられると
ヘリは屋上からすぐさま離陸した。


桜塚神社近くの海神校のヘリポートに、承諾を得てヘリを着陸させて
そのまま神社まで道を急ぐ。




桜塚神社のすぐそばにある、譲原家を訪問する。




少女は今も見つからなかった。



俺たちが持った手札を開示した後、
咲久殿はゆっくりと口を開く。




「孫が保護をしたのは娘と再婚相手の間に生まれた子のようです。  
 咲は、娘に置き去りにされた後も、母のことを思い続け慕う孫でした。
 
 ショックだったのでしょう。

 昔、桜鬼神【おうきしん】に聞いたとことがあります。

 人は生きることに絶望した時、真っ白い手招きが見えるのだと。
 その手をとった時、異次元の世界へと連れられるのだと。

 咲も……それ故に、消えてしまったのかもしれません。
 ですが……孫には和喜【かずき】がいます。

 和喜の存在が、咲を助けてくださると儂は信じているのです」

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