悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence


「お前、メールの日から何日過ぎたか知ってるか?
 
 丸四日だぞ。
 お前がメールした後から、由貴をここに連れてきたのは俺。
 
 その後も、お前が目覚めないって狼狽えて鷹宮の連中にもいろいろと
 世話になってるみたいだな。

 お前の指導医も、様子見に来たみたいだしな」


時雨の言葉に、あの日からまた四日も過ぎていることに驚いた。
ただ眠っていただけの感覚が、そんなにも時間を経過させてしまっていた現実。




それでも目覚めはすっきりしていて、俺は布団の中で大きく伸びをして
体をゆっくりと起こした。




「飛翔?
 もう起きて大丈夫なのですか?」



今も心配そうに視線を向ける由貴。



「あぁ、よく寝たからな。
 それより飯でも食って帰るか?

 神威の様子も気になるしな。
 飯、付きあえよ」



短く告げると、由貴も時雨も静かに頷いた。


布団から起き上がって、畳んで部屋の隅に置くと
そのまま台所の方へと顔を出す。



「おはようございます。
 飛翔さま、氷室様、金城さま」

「朝ご飯を頼めるか?」

「かしこまりました。
 どうぞあちらのテーブルへ」



誘導されたテーブルへと着席すると、10分も経たずして
色とりどりに飾られた和食が運ばれてくる。


あっさりとした位に優しい味付けで。




「早城さまより幾度かお電話がありました」



村人の婦人部から何人か、お手伝いに来て貰っている中の一人が
頭をさげながら告げる。



その言葉に、両親に連絡する出来ていなかったことを今更に思い知る。



朝食の後、すかさず携帯を取り出して実家へとコール。
1回目の呼び出しが終わるかどうかくらいの早さで電話が繋がる。



「飛翔?飛翔なのね」


おふくろの声は凄く憔悴しているように感じた。


「あぁ、悪かった。
 兄貴の代わりに御神体を下ろした後、寝てた」

「そう……無事に役目を務めたと言うことね。
 お疲れ様でした」

「有難う。
 悧羅に顔を出して神威の様子を見て、今日はマンションに帰る。
 晩飯、頼む」

「えぇ、ご飯作って待ってますよ」

「あぁ。
 その前に母さんも少し休めよ。俺は大丈夫だから」


そう言って通話を切った。


その後は、兄貴の墓参りだけを済ませて総本家を後にする。
途中で、由貴と時雨とわかれて俺は神前の病院へと足を運ぶ。




関係者パスを見せて、顔を出したとき
俺よりも先に目覚めて、あの鬼の青年の傍にじっと座っている神威を見つけた。




「神威……」

「あっ、飛翔……。
 桜鬼、倒れてたところをここに運びこばれたんだ。
 ずっと眠ったままで目覚めない」



そう言うと神威はまたじっと、眠ったままの青年を見つめなから
その場で固まる。



「神威……大丈夫だ。
 雷龍たちが力を貸してくれただろ。
 お前はちやんとアイツを助けられたんだよ」

「……助けられたのかな?」

「助けられたよ」




自分にも言い聞かせるように、もう一度ゆっくりと呟いた。

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