悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence




「こんばんは。
 貴方、お名前は?」

「神威」

「神威さんって言うのね。
 この場所は、桜鬼神と言う神様がずっと守ってくださった大切な場所なの。

 貴方にも……この場所が大好きで、この地に住まう民が大好きだった
 そんな神様の優しいご加護が降り注ぎますように。

 また何時でもいらしてね」




そう言うと、竹ぼうきを持ちながら境内の掃除を始める。




「ねぇ、この桜の木座らせて貰ってもいい?」



ボクは咲に問いかける。




「えっ?この木に登れる?」

「うん。
 頑張れば登れる。

 この木のあの枝で、何時も座って見てたんだよね。
 桜鬼の神様は」

「まぁ、良く知ってるのね」

「視たから……。
 この場所が大好きな、桜鬼の夢を」

「そう。
 どうぞ気をつけて登ってね」
 


咲の言葉に、ボクは大きな桜の木手を伸ばす。

飛翔にも支えられながら、桜の木の枝を這いあがると
枝と枝の根元に、チョコンと腰を下ろす。




その場所から眺める世界は、
とても小さくて、そしてとても輝いて見えた。






15分ほど、その景色を楽しんだ後
ボクは桜塚神社を後にした。




その途中、病院から呼び出しが入ってしまった飛翔は
鷹宮に立ち寄る。



アイツが走り回りながら仕事をしているのを見届けて
ボクはアイツの仕事が終わるのを待ってマンションへと帰宅する。









あの時、助けられた存在が今は別々にそれぞれの道を歩いている。



その記憶が一つに繋がるのか、わかたれたままなのかは
ボクにはわからにないけど、
そんな二人の時間が再びめぐり合って欲しいと祈り続ける。






和鬼……。


さぁ、起きろよ。
お前が起きるのを皆、待ってるんだ。


世界は明るいよ。










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