悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence




「早城っ、この子のことは任せていいから、
 君は避難所で出来ることを。

 ここで出来る処置を終えたら、
 ヘリが飛べるタイミングで、神前へと搬送する」



そう言うと、先生たちは神威の処置を軽く終えて
手作り担架に乗せると、避難所の方へと搬送していく。



避難所には、神前のスタッフたちに混じって
由貴と勇の姿が確認できた。



「裕兄さん、飛翔」

「勇人、ヘリの交渉を頼む。
 神前まで搬送したい」



裕さんに指示された勇は、
すぐに何処かへと走って行く。


「飛翔。その子?」

「あぁ」

「見つかったんですね。
 飛翔の甥っ子」


見知った顔を確認して、
俺の貼りつめた緊張も一気に緩んだのか
少し傾いだ俺を由貴が支えてくれる。




「飛翔、僕と由貴も後で行く。

 神前の天李先生が同行してくれるみたいだから、
 ヘリに乗って。

 先に神前で様子を見て鷹宮に転院させるから」


慌しく動き始めた歯車に
流されるように俺はヘリにガキと共に乗り込む。



ヘリは故郷を離れ、
住み慣れた都会へと空を渡る。



心に降り続ける
雨が呼び寄せた出逢い。





初めて、出逢った兄貴の忘れ形見の存在を
近くで感じながら。



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