悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence

13.奪う雨 -飛翔-


神威が姿を消して二週間以上が過ぎた。


昂燿校の入寮日・始業式の頃になっても
アイツは見つからない。


一途の望みと共に、学院に戻っていてほしいと
昂燿校へと出向いてみるものの、学院にもアイツの姿はなかった。


その帰り道、悧羅校に立ち寄り、悧羅学院の理事長の元を訪ねて
簡単に神威の置かれている現状を説明して、安全が確保できるまで
休学させて欲しいことを伝えた。


それと同時に、神威が学院に戻った際に
真っ先に連絡を貰えるようにも依頼した。



神威を探しながらも、四月から始まった研修の日々は続いていく。



研修が始まったと言うのに、
集中力がついていかない俺自身の現状。




「早城、何やってる?」



怒鳴るように嵩継さんの声が響いて、
俺は成すべきことすら出来ないまま、
ただその場で立ち尽くすだけになってしまう時間。



時間の中で、俺だが時が止まってしまったかのように
置き去りになってしまっているように思えた。





「早城君、こちらへいらっしゃい」



俺を連れ出すように、手招きする水谷さんは
そのまま彼女の部屋へと連れていく。




入室した彼女の部屋には、先客が居て
鷹宮院長は、静かにお茶をしているようだった。





「失礼します。

 あの……院長がいらっしゃるようですので、
 私はこれで」


どうにかこの場から逃げ出したくて、
きっかけを作ろうとするものの、そう上手くはいかない。




「早城、私が呼んだんだよ。
 
 皆から、いろいろと君に関する情報があがってきていてね。
 勇人や千尋、それに嵩継からも君を心配しているようでね。

 神前の政成さんは知っているかね」
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