悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence


そして最後に締めくくられたのは、


「徳力の歴史においてここ数年の間、
 神がお怒りになられているのかこのような儀式が頻発しています。

 このような儀式が数年の間に、立て続けに繰り返されることなど
 本来ならあってはならないのです。

 ですが、民が苦しみを感じた時、自らに戒めを与えて
 天に還られるのが、生神の役割。

 それもまた、遠い古より、神のご意志による約定なのです。
 
 ご当主の、お母上様も、お父上様も見事に、その役目を果たし
 民を今日まで守り続けて参りました。

 その役割から逃げ出した、神に意に背いた裏切り者が
 早城飛翔。

 一族は彼の存在を受け入れません。

 ご当主、私もまだ小さいご当主にこのような重き役目を押し付けるのは
 心苦しいのです。

 ですが、君が立派にその役割を果たされることは、
 神になられたお父上様、お母上様にとっても誇りとなられるでしょう。


 ここ数日の間は、儀式を行うには日が悪く
 今だ見定められてはありません。

 日が確定いたしましたら、総本家より正式に迎えの者が参ります」




康清は最後まで言葉を紡いだ後、深々とお辞儀をして
部屋をまた後にする。





依頼した通り、新しく用意された神水。




神水を再び、コップ一杯飲み干して
そのまま布団の中へと、その身をしずめた。





民を守ることが……村人を守ることが
当主としての務めで、父の望みなら……ボクは
ボク自身の意志で、それを成し遂げたい。





それを邪魔をするアイツは……
ボク自身が拒絶する。





こんなにも黒い雨が心に中に蠢くのは
初めての感覚だった。



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