悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence




だけど……そんな我儘は、
今のボクには許されないんだ。



ボクは一族の民を守る長。



その為には……この命も、
投げ出さなくてはいけない。



ボクの命は、ボクだけのものじゃないんだから。





「ご当主、康清でございます」




ドアの向こう、聴きなれた声が聞こえる。





慌てて布団から体を起こすと、
その布団の上で正座をして覚悟を決めたようにドアを見つめる。





「入れ。康清」



威厳を込めて告げた言葉の後、
ゆっくりと康清がドアを開けて部屋の中に入って来る。





「ご当主、お知らせ申し上げます。

 魂還りの儀、一週間後と一族の総意を持って
 決定致しました。

 お心静かに、それまでをお過ごしください」





恭しくお辞儀をして部屋を後にする康清。




「康清、今日のご飯は食べやすいものにしてほしい」



今までまともに食事をとろうとしなかったボクが
突然告げた言葉に、康清は驚いた表情を見せながらも
「畏まりました」っとゆっくりと頭を垂れて出ていく。




何時もと同じように、外から閉ざされるドア。





それも後、一週間。




最期を告げられた時間、
ボクはどうやって過ごすことが出来るのだろう。




当主として……。






窓の外に映る雨は今も激しくて。



そんな激しい雨に、ボクの覚悟を後押しして貰うように
ただジッと、雨音を聞きながら独り過ごしていた。
 
 
 
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