悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence






時雨が仕事の為に病室から出ていった後も、
私は一人、飛翔の病室に留まり続けた。





「飛翔……また行くんだよね。
 神威君を探しに」

「あぁ」

「なら……明日は私も休みですから、
 手伝わせてください」




手伝わせてください。



思いつきで告げたものの、
今の私に何が手伝えるかなんて、正直わからない。


だけど……それでも、
そう告げずにはいられなかった。




「あっ、俺の車……」



そう漏らした飛翔の言葉を聞き逃さない。



「飛翔は時雨の車で帰ってきましたからね。
 飛翔の車がないのは不便ですよね。

 明日は私の車で出かけましょう」



そう言いながら、赤いミニクーパーを思い浮かべる。




その夜、久しぶりに飛翔の傍に寄り添う。




「仮眠室で眠らなかったのか?」



朝、目が覚めた飛翔が椅子に座ったまま
眠り続けていた私に声をかけた。



「仮眠室に行くのが面倒だったので。
 飛翔が眠ってる間に、嵩継さんにはちゃんと話つけてきました。

 無事に用事終わらせてから、一応検査だけ受けとけって。

 出掛ける前に医局に顔出せって、嵩継さんからの伝言。
 私、先に医局に顔出してきます。

 飛翔も準備が出来たら来てくださいね」



そう言って病室を後にすると、ロッカールームから鞄を手にして
医局へと顔を出す。


そこには、本宅から朝食の出前をしてきたらしい勇が、
サンドウィッチとサラダをテーブルに広げて、
嵩継さんが仕事をしながら食事をしていた。



「おはよう、由貴。
 飛翔は?」

「もうすぐ来ると思う」



短く告げると、当たり前のように準備された飲み物が
机の上に置かれる。



用意された珈琲を飲みながら、
サンドウィッチを一切れ掴み取ると、口の中にいれる。

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