悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence



再び医局のドアが開いて姿を見せたのは飛翔。



飛翔にも同じように勇が飲み物を手渡すと、
ブラックコーヒーを飲み干す。



「飛翔、裕兄さんにも何時でも動いて貰えるように頼んだ。
 だから総本家で何かあったら、すぐに連絡して。

 僕もすぐに動けるように準備はしたから。
 飛翔が出来なくても、由貴は電話くれると思うから」


「えぇ。
 その為のお目付け役で、私は同行するのですから」



そんな言葉を声にしながら、
飛翔の方をチラリと見つめる。



飛翔はただ無言のまま、
勇の持ってきたサンドウィッチを食べる。



食事が終わった後、飛翔は嵩継さんと、
いつの間にか医局に顔を出していた鷹宮院長に気が付いて、
二人の傍へと近づいてお辞儀をした。



「もう一度、神威を探しに行ってきます。
 今しばらく、研修を休ませてください」


深々とお辞儀をした飛翔に、

「あぁ、行って来い。
 見つけ出すまで帰ってくんな」

なんて言葉を告げる嵩継さん。


鷹宮院長はただ飛翔の腕を「頑張りなさい」と告げるように
トントンと叩く。



「由貴、行くぞ」



飛翔の言葉に、私も深々とお辞儀をして
慌てて飛翔の方へとかけていく。




私の愛車を走らす道程は、
何時か、勇と共に飛翔の車で帰ってきた道程を逆にたどっていく。



運転に見かねた飛翔が途中のSAで運転を交代して、
そのまま安倍村まで再び、車を走らせていった。
 
















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