悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence



短い人生だった。




そう言ってしまうことが出来れば、
どれだけいいだろう。




もう叶わないと知りながら、
心の中では、また生きて沢山のものを学びたいとさえ
求めてしまう心。




「ご当主、お輿の仕度が整いました」





儀式を仕切る康清も白装束を身にまとって姿を見せる。




「ご当主、早朝よりお支度の儀、お疲れ様でございました。
 これより、ご当主の頭髪を僅かに頂戴いたします」



そう言うと深々とお辞儀をした後、
何かで髪を少し削ぎ落としているのを感じた。

懐紙に包んで、胸元にしまい込んだ後、
再びボクの方を見て、深々と頭を下げた。




……もう全てを諦める……。





何度も何度も自分に言い聞かせてきた。



これが宿命であり、
父さんや母さんも背負った現実。





「それでは、これより儀式を始めたいと思います。
 ご当主は、どうぞお輿へ」
 


康清の声の後、
ボクは行列の先頭を歩くように洞窟を後にする。


暗がりの洞窟を出ると、
太陽の光が雲の合間から差し込んでいるものの
外は今にも雨が落ちてきそうな天気だった。


同じように白装束に身を包んだ村人たちが
輿のところまで、左右に行列を作って地面に頭を擦りつけるようにお辞儀している。


そんな花道を一歩ずつ、自分の足で踏み出すと
輿の中へと乗り込んでゆっくりと座った。



輿の飾り扉が閉じられて、
「ソーリャー」の声と共に、一気に浮遊する感覚が伝わる。


掛け声が続けられる中、一歩ずつ担ぐ人々が一歩踏み出すたびに
輿の中のボクにまで、その振動が伝わってくる。



外は何時の間にか、雨音が聞こえるようになっていた。


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