悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence



俺自身も人数を見極めながらやりあっていたはずが、
一人で倒すには、分が悪すぎる人数が集まり
最初に殴られ倒されたのをきっかけに、防御に徹しながら
腹部や胸部に入る暴力を必死に防ぐ。



何時の間にか持ち出してきた、
棒による乱暴。


口の中を切って流れ出る血を手で拭い取って、
そのまま、砂の上に吐き出す。









……兄貴……。






力を貸してくれ。







俺は神威を助けたい。





節々まで痛みが走る体を必死に起こして
ゆっくりと立ち上がるとまた神威のもとへと走り出す。






もう一度、
神威の腕を掴み取る。











村人たちの暴力を受けて同じ繰り返し。










「神威、
 手を取れっ!!」







近づいて、何度も叫び続けるものの
神威の返事は聞こえない。



輿に居た時は、俺の名を呼んだはずの神威は、
もう瞳に何を映さなくなったように、

「村人たちを助けないと」

っとまるで暗示にでもかかったかのように
うつろな目を向けてブツブツと繰り返して紡ぎながら
フラフラと海へと向かい続ける。



無力感だけがただ押し寄せながら、
神威にもう一度近づくタイミングを
見計らいながら村人たちの暴力を耐えしのいでいた。

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