捨て猫にパン
ずっと…これからの将来を、陣主任と…?


すぐに。


すぐにそんな誓いはたてられないよ…。


こんなことになった、体を重ねたことに、あたしもウソはない。


陣主任のこと、人として尊敬してたし、好意…それが恋愛感情だったかどうかはわからないけど───好きだった。


気さくで優しくて、仕事に対しての責任感とか、ちょっと気の短い所もあったりするけど、そんな完璧じゃない人間らしさにも惹かれる。


でも。


でも、ね…。


「すぐに返事って言わねぇけど、俺、そんな長くも待ってられそうにないから。北海道で答えくれねぇかな」


「…ハイ」


「でさ、俺さ」


「ハイ?」


「このまま帰れそうにないって、アリ?」


「ん…」


「もう1回、もっと激しく真琴を感じさせて」


「───ア…!」


さっきよりも強く激しい愛撫に、あたしの体も敏感に反応してしまう。


陣主任の声が、唇が、手が、あたしを何度も何度も頂点へと送る。


カーテンもひかずに白んだ空が見え始めた頃、陣主任はあたしの胸に小さな花びらのような赤を残して、アパートを出て行った。


あたしは。


その胸の奥の小さなつかえを無視しようと、右手の甲にいくつもの内出血の跡を刻んだ。
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