捨て猫にパン
───………。


───トン、トン


…。


───トン、トン


ハッ!!


薄暗い部屋の中で腕時計を確認すると、19:15!!


陣主任との晩ご飯の約束、15分オーバー。


慌てて部屋のドアを開けて、ちょっとムッツリな陣主任にごめんなさい。


「スイマセンッ」


「これが契約先なら、真琴、ソッコーoutだぞ」


「ハイッ」


「…てか、さ。直せよ…」


「へ?」


「スカート、めくれてんだけど」


「ひゃぁっ!」


「誘ってんの?」


「そ、そんなワケではっ!」


───バタン


部屋のドアを閉めて入ってきた陣主任は、あたしの背に合わせてかがむと、指で口元を拭った。


「ヨダレ」


「あ…」


「そーゆーヌケてるトコ、たまんなくかわいいよな」


そう言って照れくさそうに笑った陣主任の手が、あたしのショートボブに触れる。


引き寄せられてくれるキスは、やっぱりほのかな柑橘系の香りがして。


唇から頬に、耳に移動する主任の唇に、どんどん体の力が抜けていく。
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