捨て猫にパン
陣の迷いのない、真っ直ぐな言葉。


フワフワの風船をしばってくれる言葉。


嘘偽りのない瞳に。


あたしが見える道が一本になる。


「ずっと…あたしだけを愛してくれます、か?」


「うん。俺は真琴だけに愛を誓う」


「あたしも…陣に誓います」


「うん、信じる。明日さ、指輪買いに行こう」


「指輪…」


「恋人の証。俺のガラじゃねぇかもだけど、そのぐらい縛っとかなきゃ、真琴、飛んで行きそうで、さ」


「うん」


「じゃ、今日は俺、隣の部屋で寝るよ。真琴、立てなくなったり声枯らしたりさせられねぇもんな」


「い、言わないでっ」


「そんくらい大事にしたいっつーコト。じゃ、真琴、おやすみ」


「うん…おやすみなさい」


あたしの左頬にキスをくれた陣は、はにかんだ笑顔を残して部屋を出て行った。


翌日、右手の薬指に指輪をはめて自分の部屋に帰ると。


倉持さんがくれた鉢植えの朝顔は枯れていた。
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