捨て猫にパン
どっちか、って。


選ぶ権利なんて、あたしには、ナイ。


あたしの指には、もう誓いのリングがある。


まるで飼い猫の首輪みたいな陣との証。


今更裏切るなんて、できっこないよ…。


♪~♪~♪


光るスマホのパネルに陣の名前。


あたしは手の甲を強く噛んでから、通話をタップする。


『もしー、真琴』


「うん、もしもし?」


『ゴメン、今日ちょっとバタついてたから明日の打ち合わせとかできなかったし。2日間、俺も休み合わせたからさ、今から家帰って荷物まとめたら、そっち行っていいか?』


「うん、いいよ」


『今から会社出るから。じゃ、後で』


「はぁい、待ってます」


通話を切って、あたしは迷いを捨てるかのように、タバコのお守りとりんごあめをゴミ箱の底に埋めた。
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