隣の部屋のナポレオンー学生・夏verー
「まちだ先生いいぃぃぃ‼︎」
あたしはバッとドアを開けて飛び込んだ。
見れば、ナポレオンは待田先生に詰め寄られ、壁まで追い込まれている。
さらには、その白くしなやかな指で顎をなぞられていた。
や、やっぱり……‼︎
嬉しいのやら驚いてるのやら、いろんな感情があたしの中を突き抜ける。
そんなあたしの前で、待田先生はナポレオンの顎に触れたまま、「ふ」と艶かしく笑んだ。
「白馬の王子様のお出まし、といったところですかな、陛下」
誰が王子様じゃい……。
あたしは突っ込みを入れたくなる。
これ、ケータイ小説でしょ。
普通だったら、襲われてるのは女の子で、助けに来るのは男の子じゃんよ。
……なぜあたしが、いつの間にか白馬の王子様に?
「ひっ、緋奈子!
来てはダメだ!」
なんかナポレオンが、やけにヒロインぽいこと言ってるんだが……?
敵城に乗り込んで来たヒーローに「来ちゃダメっ……‼︎」って必死に訴えるシーンそのものだよ、これ。
あたし、ついにヒロインの座を、ナポレオンに乗っ取られちゃったらしい。