隣の部屋のナポレオンー学生・夏verー





「まちだ先生いいぃぃぃ‼︎」


あたしはバッとドアを開けて飛び込んだ。

見れば、ナポレオンは待田先生に詰め寄られ、壁まで追い込まれている。

さらには、その白くしなやかな指で顎をなぞられていた。


や、やっぱり……‼︎


嬉しいのやら驚いてるのやら、いろんな感情があたしの中を突き抜ける。

そんなあたしの前で、待田先生はナポレオンの顎に触れたまま、「ふ」と艶かしく笑んだ。


「白馬の王子様のお出まし、といったところですかな、陛下」


誰が王子様じゃい……。

あたしは突っ込みを入れたくなる。


これ、ケータイ小説でしょ。


普通だったら、襲われてるのは女の子で、助けに来るのは男の子じゃんよ。


……なぜあたしが、いつの間にか白馬の王子様に?


「ひっ、緋奈子!
来てはダメだ!」



なんかナポレオンが、やけにヒロインぽいこと言ってるんだが……?


敵城に乗り込んで来たヒーローに「来ちゃダメっ……‼︎」って必死に訴えるシーンそのものだよ、これ。


あたし、ついにヒロインの座を、ナポレオンに乗っ取られちゃったらしい。





< 38 / 45 >

この作品をシェア

pagetop