マーメイドの恋[完結]
夏子は朝早く目が覚めて起き出し、リビングの窓から海を眺めた。
浜辺に人がいた。
倉沢だ。
倉沢は、夏子を見て手を振った。
夏子は咄嗟に、腕でバツの形を作り、手を振るのは駄目だということを伝えた。
倉沢は、察してくれたようだ。
シャドーボクシングをしながら走り去っていった。
今日は仕事だ。
夏子はバスルームへ行き、バスタブにお湯をためた。
昨夜はお風呂に入らずに、ふたりとも寝てしまったからだ。
伊原の性欲は普通の男性より強いのだろうか。
だから女から求められても絶対に断らないのだろう。
そして、伊原自身甘い言葉を言えば、女など簡単に落とせるという自信もあるようだ。
女には困らない男とは、そういう男なのだろう。