マーメイドの恋[完結]
それから3日後の朝。
『夏子のビーチ』で倉沢に会った。
「おはよう」
「おはよう夏子さん。仲直りしたみたいですね」
「うん。おかげさまで」
「良かったです。ほんとは残念ですけどね」
「これからも大変かもしれないわ」
「そしたら又、俺が話を聞きますよ」
「倉沢くんって、ほんとに優しいんだね」
「夏子さんにだけですよ。誰にでもってわけじゃない」
倉沢が急に真剣な顔をしたので、夏子はどうしていいのかわからなかった。
だが、夏子の身体の真ん中あたりが、キュッと音をたてたように感じた。
「私ね、この年まで本気で人を好きになったことなかったのよ。人を好きになるって、自分の気持ちとは全然違うところから湧いてくる感情なのね。あんな人駄目なんだってわかっていても嫌いになれなくて」
倉沢も、夏子に対しての好きという気持ちは、こんなに苦しい気持ちなのだろうかと夏子は思った。