マーメイドの恋[完結]

マサは、大阪から月に2回夏子に会いに帰ってきた。
離れていると寂しいが、その分会えた時に激しく愛しあえるというのも、とても新鮮な気がしていた。


マサと恋人になって、今まで経験したことのない感情が沸き起こることが、不思議な感覚だったが、楽しくて嬉しくて悲しくて、ドキドキとした。


もちろん、伊原には電話で別れを告げた。
自分にも、他に好きな人ができたことを手短に伝え、伊原が何か弁解めいたことを言っていたが聞かずに電話を切り、伊原の番号を着信拒否に設定した。


そして、メールボックスに合鍵を入れた。
これでもう、伊原と会うことはない。


マサが、大阪から帰ってきてくれるのは嬉しいが、とても無理をしているのがわかった。


そして、3ヶ月が経った頃、マサからの連絡がぱったりと途切れた。
電話をしてもメールをしても出ないのだ。


夏子は当然、心配になった。
そうなってみてはじめてわかったのは、夏子はマサのことを知っている人との交流がまったくなかったということだ。


誰かにマサのことを聞きたくてもできない。


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