マーメイドの恋[完結]

「夏子はどんどん感じてくれるようになったね」


夏子が、あの忌々しい光景を思い出して「いやぁ、いやぁ」と声を出しても、それを喘ぎ声だと伊原は思っているのだ。


「夏子の中が一番気持ちいいんよね。何度でもしたくなるっちゃん。他の女じゃこうはいかんばい」


そう言っている伊原は、確実に今も他の女を抱いていることは、夏子にはわかっていた。
しかし、女を抱いて儲ける仕事とは、いったいどんな仕事なのだろうかと、夏子は疑問に思った。
その答えは、意外な形で知ることとなった。


伊原と夏子が、夜、外食からマンションへと戻ってきたときのことだ。
駐車場からエントランスの方へと歩いていると、ひとりの中年の女性が、伊原と夏子の方へと近づいてきた。
夏子は、同じマンションに住んでいる人なのだろうと思い、会釈しようとした。


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