マーメイドの恋[完結]
この男も自分を振り回す男なんだと、予想通りの伊原の行動に、夏子は会う前から気だるさを覚えた。
毎朝、浜辺に出ていると、会う人の顔はほぼ覚えてしまった。
だが、軽く挨拶をすることはあっても、話をしたことはない。
犬の散歩をさせているお年寄りや、ランニングをしている人、近くにボクシングジムがあるのか、シャドーボクシングをしながら走っている人。
『夏子のビーチ』の常連さんたち。
夏子は急いでメイクを直した。
すぐに伊原から電話がかかり、下へ降りていく。
ベンツが泊まっていた。
「乗って」
伊原は何台車を持っているんだろう。