マーメイドの恋[完結]
嘘だ。
と夏子は思った。
しかし、過去のことを詮索する気はさらさらなかった。
ロカビリーの曲が流れる車内。
伊原の車の助手席にいる自分。
現実感がまるでなかった。
デートなんていつしたのが最後だったか。
男と会うのはいつもホテルだった。
伊原とのデートも最初だけで、後は伊原の部屋で会うだけになるに違いない。
そして今日も適当にデートを済ませたら、伊原の部屋に行くことになるんだろう。
男なんてみんな同じ。
男から愛される女性ってどんな人なんだろう。
男から大事にされるにはどうすればいいんだろう。
「ほら」
「えっ?」
「夏子って面白いな」
伊原が夏子の手をとった。
伊原が手を繋いでくれたのだ。