マーメイドの恋[完結]
水族館には午後4時前に着いた。
閉館は午後5時半なので、2時間弱ある。
イルカやペンギンのショーは見れないかもしれないが、十分楽しめるだろう。
順路通りに見て回り、夏子は白いスナメリの前で立ち止まった。
「なにこれ、白いイルカ?珍しいね」
伊原から聞かれたが、イルカじゃないと言うのも躊躇われたので言わなかった。
「私、好きなの」
「ふ〜ん。ここの水族館よく来ると?」
「ううん、はじめてよ。昔お父さんが連れて来てくれた時は、まだここは出来てなかったから。この子テレビで有名なの」
しばらく眺めてから「行こ」と、伊原の手を自分から繋いで歩きはじめた。
「ふぐでも食べて帰ろうか。せっかく下関まで来たんだし。10月だから食べられるよね。でも門司も下関もあまり海が見えないね」