マーメイドの恋[完結]
「マンションに車置いてから、どこか飲みに行こうか。その前に何か食べるだろ。何がいい?」
迎えにきた車の中で伊原が言った。
「私はあまり外で食べないから。何がいいのかな」
「美味しいステーキ屋があるから、そこに行こう。目の前で焼いてくれるとばい」
伊原のマンションからタクシーに乗り、運転手にステーキ専門店の名前を告げた。
店内に入ると、伊万里牛や佐賀牛などの文字が目に入った。
ー高そうな店。緊張する。また全部食べられないかもー
器用な手さばきで焼かれたステーキが、夏子の皿に移された。
「いただきます」
お箸が添えられていたので少し安心した夏子は、切り分けられた肉を箸でつまんで口に入れた。
「おいしい!」
思わず口から出た言葉に、伊原が嬉しそうに目を細めた。